山崎磨きになったHektor 7.3cm f1.9が帰ってきました。山崎光学写真レンズ研究所

こんにちは!前のめり(@maenomelife)です!

 

ライカレンズの修理は通常1-4ヶ月程かかるので待っている間がすごく長く感じるのですが、今回ほど待ち遠しかったレンズは無いかもしれません。

私の大好きなHektor 7.3cm All Blackをもう1本入手し、山崎光学写真レンズ研究所さんの匠の技(通称:山崎磨き)により6ヶ月かけて生まれ変わって来てくれました。

 

...と言いたかったところですが、結論から言えば完全修理は不可でした。

しかしながら、描写は劇的に改善しました!

 

このHektorというレンズは本来ノンコートでありノンコートの良さが生きる数少ないレンズのうちのひとつであるとは思っていますが、状態の良いオリジナルも所有しておりますので徹底的に光学性能を引き出せるよう躊躇ない研磨とコーティングをお願いしたのですがどうもHektor73mmは研磨することは設計上難しいようです。

 

修理結果

修理に出す前のガラスは結構酷いものでした。

傷、曇りに軽いバルサム切れと散々です。(これはこれで良い味出るんですけどね)

 

修理に出す前の写真はこんな感じ。

かなり緩くてコントラストも低いです。

 

抜けのいいノンコートだとこれくらい写るのでかなり性能が低下していたのが分かります。

 

そして、修理から帰ってきたものがこちら。

 

残念ながら傷や曇りは完全には取れておりませんが、以前に比べればはるかに綺麗になりました。

 

そして全体に美しいコーティングがかかっています。

今回の修理内容は全群の可能部位曇り取りとバルサム貼り直しコーティングというフルオプションです。

 

曇りを磨いて綺麗にするだけならやろうと思えばできるのでしょうが、レンズ描写を変えない範囲で出来ることを十分に検討してくださった結果なのだと思います。

修理方針についてもどこまで叶うかは私には分かりませんが、預ける時にどのようにしたいのかというお話があります。

ですので人によっては性能が復元される最低限の研磨に留め、コーティングもしないようにすることもできます。

 

2ヶ月ほど経ったある日、研磨により性能が復活したので、バルサム切れは写りには影響しないでしょうと連絡をいただきましたが、レンズにとって研磨修理は一生に一度の機会ですからまたこれから90年元気に頑張れるようにと再接着もお願いしました。

このように相談しながらかなりきめ細やかに修理してくれるので、とても信頼感があります。

 

オールドレンズの研磨やコーティングについて

ここで、たまに議論の種になるオールドレンズへのコーティングについて。

 

オールドレンズとは、これまでそのレンズが歩んできた時間も含めて価値が蓄積されたレンズです。

工業製品ですから熟成ワインのように味わいを感じるのはなかなか難しくはありますが、良い使われ方をしてきたものはその外観含めファンには眉唾物に進化するわけです。

 

新製品には無い、人の一生よりも長い時間を歩んできたレンズですから、研磨は破壊行為でしか無いという意見もあるわけです。

コーティングについても本来よりも光学特性的には向上しますが、その結果写真としてみた時には改悪となってしまう事もあるかもしれません。

どちらもごもっともな意見だと思います。

 

まずコーティングの問題についてですが、通常ノンコートのレンズ1面を通る光は4%が反射し透過率は96%程度になるそうです。

 

本当かなっていつも思ってるんですけど、このレンズの場合3群で6面なので0.96の6乗でレンズを抜けるまでには78%まで減衰します。

f値が半段くらい変わってくるので結構大きいですよね。

 

一方でモノコートの場合1面あたりと透過率は98.5%まで向上するので、トータルとしての透過率は91%まで改善します。

つまりはHektorをモノコートにすると本来の性質に対して大体16%くらい光が多く入るということでしょうか。

そんな感じでコーティングをすると抜けが良くなり、コントラストも改善します。

 

当時の設計思想は分かりませんけども、恐らく反射率も考慮したうえで設計され画質評価されていたと思います。

なので内部反射が殆どないレンズは設計者が夢に描いていたもので素晴らしい描写になるかもしれないし、想定外の要素となり描写に悪影響をもたらす可能性もあります。

 

ただひとつ言うならば、このレンズの設計は1930年以前なのでコーティングは考慮されもしなかったと思いますが、WW2戦時中にはコーティング技術が確立していた(軍事の為民製品には適用できなきった)といわれ、現にElmarやSummitarなど多くのレンズが初期はノンコートで途中からコーティングされるようになりましたし、ほぼ全てのレンズはLeitZによる後コーティングが受け付けられていて純正コーティングされた個体も残存しています。

 

一般的にはオールドレンズへのコーティングはフィルムであればあってもいいが、デジタルだと少しきつくなるとか、本来の柔らかさが失われるので、必要に応じて偏光フィルターで調整するくらいで良いのではないかと言われています。

 

ガラスはご存知の通り安定した状態の固体では無いので、大切に扱ってもいずれ経年変化していきます。

設計図通りに修復できるような環境がいつまで存在するかも分かりませんから、状態の悪いものを研磨し復元する行為を私は肯定します。

名画も劣化したら復元されますからね。

 

ただ、人によってはオリジナルに強いこだわりを持つ方もいらっしゃると思うのでレンズのマウント側内部のどこかに判るように印とかあったら良いかもしれませんね。

オリジナルの張革とかも私は新品にしたい派ですが、カケラを集めて修理する方も多くいらっしゃいますし、議論が尽きないテーマなのだと思います。

 

写りはとにかく素晴らしい。

研磨頂き、それはもう劇的に良くなりました。

こんなにも逆光なのに、虹は僅かでコントラストも粘っています。

  

余計な曇りがほとんど取れて、状態の良いレンズと同じくらいシャープになりました。 

とはいっても1930年の大口径レンズ。まだまだちゃんとゆるいですけどもね。笑

 

そして開放からコントラストも向上しています。

 

しかしながら、持ち味であった滲みについては健在と言えます。

  

もちろん、特有のザワッとしたボケ味も変わりません。

 

私的には、利点はそのままに(研ぎ澄まされているのかも)欠点が大きく改善したと言えます。

 

山崎さんありがとうございました。

今回は難しいお願いをすることになってしまい、ただでさえお忙しい山崎さんには大変申し訳ない事をしてしまいました。

 

ダメダメだったレンズが生き返った

しかしながら、闇雲な研磨は行わずに描写を第一に修理してくださったことには本当に感服しました。

 

みなさん、レンズはこれくらいなら曇っていても大丈夫です。笑

 

といっても、バラして1群ずつ光を当ててみると殆ど曇りは感じられないので、かなりギリギリまで攻めているのかもしれません。

中玉とか周辺にクリーニングでは取れないシミみたいな研磨ムラ?がありますし。。笑

 

他の方のレビューを見ると、いずれもピカピカになって帰ってきているので、こういうこともあるよいう事で参考にしていただければと思います。

 

山崎さんも仰ってましたが、このHektorはかなり個体差が大きいそうなので、そういう要因もあったのかもしれませんね。

Hektor 73mmの再研磨は難しいと思っていた方が良さそうです。

 

最後に、撮影日は違いますが、オリジナルノンコートと今回の研磨レンズの比較を置いておきます。

original
coated

おっと、見ないほうが良かったかな。個体差個体差。笑

いずれにしろ、大きく低下していた画質が復活したのは間違いありませんので本当に感謝です。

 

Hektorはいいぞ!

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