毎度ご無沙汰な前のめりです。
下の記事のとおり、昨年にスピーカーの変更に伴い真空管アンプに完全に移行しました。
しかしながら、しばらくはLuxmanのSQ38FDを修理して使っていましたが、真空管の楽しみとしては今ひとつなところがありました。
これがなぜかといえば、SQ-38FDはウッドケースに覆われていますから、木の温もりは感じられますが真空管の温もりの出どころであるあのぼんやりとしたヒーターの灯りが見えないことですね。(爆熱は感じられますが)
という冗談は置いておいても、真空管というひ弱なイメージと裏腹に30Wというトランジスタさながらの高出力さがスピーカーとのミスマッチさを感じていた事、そして何より球の差し替えが効かないというところです。
50CA10は名出力管ではありますが、その見た目だけ見てしまうとmt管を大きくしたようなコンパクトロン規格なのでベースがなくてあんまりカッコ良くはない。
何よりも、NOS管は市場には殆ど残っておらず、大量に普及しているラックスの中古アンプの需要を満たせておらず、海外の名球に引けを取らないほど超高価になってしまっているのが頂けませんでした。
今現在、1本2万円くらいでしょうか。何よりショップでは殆ど売ってません。
三極管か、多極管か。
という事でぼんやりとアンプの変更を考えていたのですが、いかんせん真空管のことは素人で何も知りませんでしたのでまずは球の勉強をしました。
なお私の趣向から、近代の1本で電圧増幅管も出力管も兼ねてしまうようなものは面白さを感じられないので、古い規格のものを探しています。
三極管か多極管論争がありますが、三極管は純オーディオ用として人気は高いものの2A3や300Bといったありきたりな球ばかり、ビンテージ品では45や71Aといった球がありますが、そこまでいくと市販品にはありませんし、球もアメリカや日本のものばかり、差し替えも難しいようです。
一方の多極管はアメリカの6V6やイギリスのEL84など、音楽の歴史を作ってきた名球が多いのが惹かれました。
昨年初めて真空管アンプを買うときにはそもそも真空管といえば300Bか2A3が純オーディオ用の高級品で、EL34やKT88は二流の球だと思っていました。。
そんなど素人ですけれど、それらが欧州にルーツがあると知ってからはむしろ多極管のビンテージ品のバリエーションの多さが楽しそうで良いではないですか。(結局カメラのレンズと同じですね。)
さらには多極管は内部グリッドを直結することで擬似三結管とすることもでき、音質傾向も300Bら純三極管と同じだというのですから、現代では多極管の方が真空管というものを転がしたりして楽しむには最適だと思いました。
ELEKIT TU-8800 Limitedを購入するも…
球の差し替えを楽しむ上でも最も適切だと思ったのがこのアンプです。
細かい説明は省略しますが、このアンプはusオクタルベースの殆どの出力管が挿せるという面白いアンプです。
電圧を切り替える事でプレート損失の小さめな6F6,6V6系、中くらいで6L6系やEL34、大出力のkt88や最近のロシア系新種のkt120とか150とやらまで数多くの動作点をカバーする面白いコンセプトです。
後々アンプ設計をして思うと、これだけのプレート電流が異なる球をスイッチ一つで簡単にしかも適切な動作点で差し替えできるこのアンプは自作では絶対に実現できないものですね。
キットなので、ひたすら基盤に部品を差し込んではんだごてを当てて10時間弱かけて作りました。
まあ、1ヶ月で飽きて手放してしまいましたけども。。
新たなるアンプの検討
エレキットさんには申し訳ありませんでしたが、tu-8800は出来杉君で私には合いませんでした。
半導体マシマシ回路はどうも好きになれず、やはりオール手配線、ノンシリコンな部品で構成されていることが個人的には必須。
見た目も正直ちょっとダサいですよね。。
真空管アンプといえば立派なトランスと魅力的な真空管を眺めてこそ。
機能面でも3結とULのみという事で、多極管なのに本来の多極接続ができないのも気になりましたし、三結ならNFBなしの音も聴きたい。
そんなわがままなことを考え出すとキリがなくなりますし、まぁ市販品ではそんなものどこにもありません。
そして作ってしまったEL32,EL33,EL34他コンパチアンプ
…という事で作りました。現時点での理想のアンプ。
私の求めるアンプはどこにもないのでちょろっと既存品を改造してできないかと思案してしまったばかりに。
コンパチアンプ(Compatible Amplifier)は出力管等で異なる特性の真空管を挿し替えられるよう互換性を持たせたアンプのことで、通常は特定の真空管特性が最適な動作をするよう設計するところを、各真空管がそれぞれ挿しても壊れないように、正しく動作するよう設計したアンプです。
まずは出力管の選定ですが、SPがイギリス製なので球も欧州系で揃えました。
欧州球といえば、kt66やkt88,EL34が今でも生産され続けている人気の球で、これらのビンテージ管を狙いたいところですが残念ながらイギリス製やドイツ製のものだとペアで5万円は下らない高級品です。
真空管の値段を気にしていたら音楽なんて楽しめないし変なバイアスもかかりそうです。
王道の球は漏れなく高騰していて私の趣向的にも合わないので、よりマイナー球を選定しました。
- EL32 Mullard/Philips 5k円/pair
- EL33/kt61/6P25/6M6G等 Mulalrd/Brimar/Osram/Mazda 13k円/pair
- EL37 Mullard 25k円/pair
- CV1947(6L6G) STC,Brimar/Mullard 30k円/pair
ドイツ球は殆どが独自規格のため差し替えしやすいUSオクタルはありませんでしたが、イギリス製の球は少し王道を外せばこれだけ選択肢があります。ちゃんとオーディオ用に開発された球です。
これらはヤフオクで探したり秋葉を回れば比較的簡単に見つけることができるものです。実際今回使った真空管も秋葉原の真空管ショップで入手しています。
また、EL31,35,38など入手性が良くないものも含めれば、憧れのMullardが選び放題です。
写真のとおり見た目はサンオーディオのアンプですが、これはタムラトランスとサンオーディオ謹製のカッコいい筐体をありがたく流用させてもらったからで、中身は自分で設計した回路が入っています。
当初、キット品は改造で色々できるだろうと甘く見ていたところがありましたが、残念ながら結局はトランスとソケット、端子以外は全て一から作り直しとなりました。実質自作です。
でも、自分でアルミシャーシに穴あけしたアンプではこの格好よさは私には出せないと思います。流用した甲斐があります。
真空管は初段がGZ37(Mullard),初段がEF37A(Mullard),そして出力管は上記のとおりで、使用球はMullardで統一しました。これは他ならぬ自己満足のためですね。
EF37AはThe Valve Museumという海外の方のサイトを眺めていて記述のあった当時からオーディオアンプの電圧増幅弾に多用されてきた実績と三極管接続時の特性の良さを買いました。
価格も5k円/pairとMullardとは思えない安さです。
EF37Aは6J7系と動作条件が同じようですので、Raytheon,Sylvaniaやgec,Brimar等、差し替え可能な米球、イギリス球が他にも豊富にあります。出力管に合わせて差し替えると気分が良さそうです。
GZ37についてもMullard製かつ入手製の良さとと値段の安さから選びました。GZ37の軍用管であるCV378も全てMullard製でロゴがないものはさらに安く探すことができます。
ST管のフォルムはこの上なく美しいです。2本で5000円でもMullardというだけで幸福感に満たされます。(笑)
一応メインの動作点はEL33で設定してありますが、EL33は他の球と違いバイアスがとても浅いので、P-k耐圧等考慮する上で動作点はまだ試行錯誤の段階でもあります。
三結と五結、NFBの入切は切り替え可能にしました。
また、カソード抵抗を切り替え式にしたので、プレート電流を多く流す動作とエコ動作が選べます。
内部部品も自己満足で固めました。
内部配線はイギリス製ビンテージ、信号段のリップル用コンデンサは全てドイツROEのビンテージ(たくさん買ってしまったので)、カップリングはVitamin-Qを採用しています。
抵抗も音質に定評のあるアムトランスのAMRG、負荷が大きい所もセメント抵抗ではダサいのでDaleのNSシリーズ。ボリュームは東京光音のアッテネーターを採用しました。
これだけ内部部品を拘っても、部品代は高級オーディオを買うより全然安いですし、何より内部を見ているだけでとても幸せな気分になります。
真空管の保管について
少し脱線しますが、真空管使っている方々はどのように真空管を保管しているのでしょうか。
NOS管であれば紙箱にしまっておけばいいけれど、差し替えて使っている球を毎回あの紙箱に入れるのは面倒です。
何より、あの手で触れるだけで禿げるプリントが出し入れしているとみるみる無くなってゆくのが見ていて悲しい。
私は画像のように、百均で売っている害獣避けの丸い輪っかがいっぱいあるやつでごろっと並べています。
日に当てるのも寿命の観点から良くないようだし、ソケットに刺しておくと端子が腐食しそうだし、簡易的なスタンドを作っても地震でコロンといったら涙が出てしまうので、とりあえずはこのような形になりました。
真空管アンプについて
真空管アンプは高特性、ハイファイという方向性もありますが、個人的には周波数特性や部品のバラツキで音の違いを作ったり球を見た目で楽しむのも楽しいなと思います。
もちろんNFBのない素の特性の音を聴けることもその魅力のひとつです。
肝心の音質については、ビンテージのコンデンサがかなりエージングする必要があるのでまだ書くことができませんが、自分で作ったというプラシーボもあってか想像以上の良音で驚いています。
多極/三極やNFB切替については変化も良く感じられ、曲のジャンルによって切り替えたりできるので非常に楽しいアンプとなりました。
今回は自作して最も良かったのは、今まで理論でしか知らなかった電気回路を実体験として吸収できたことです。
抵抗値など部品の定数を決めるのはオームの法則だけ分かれば十分出来るし、リップルフィルタを通って実際に波形が平らになるのを観測できたり、カップリングコンデンサが音質に影響が大きいと思っていたらカットオフ周波数のことを全然知らなかったりと、面白い気づきもたくさんありました。
そして何より、抵抗とコンデンサ、トランスそのものの動きが目に見えるように分かり、電気回路がより見えるようになりました。
こんなことを偉そうに書きながらも、アンプの設計についてまとめてくださっている方々のHPを見ながら見よう見まねでやっただけに過ぎませんし、最初の音出しはハムノイズばかりで聞けたものではなかったですし、位相については今回は無視していますし、まだ音が出たことに嬉しくて出力波計をオシロで観測すらしていないという体たらくです。
それでも、当初は全数欧州管にしたいからといって6SN7の互換品のECC32(50k円/pair)を買おうとしていた位ですからそれを思うと、随分といいアンプにできたかなと思います。
次は真空管アンプの作り方と、このアンプの回路をまとめて記事にしておこうと思います。
まだ真空管に消耗してるの?回路図書こう!はんだごてを握ろう!そしてノイズに苦しもう!幸せな世界が待っているよ!
コメント
コメント一覧 (2件)
こんにちは、はじめまして。
LUXについて泳いでいましたら前のめり様のサイトを発見し、以来楽しませて頂いております。
不思議なことに、前のめり様のサイトを見ていると、いつも違和感を感じるのです。
が、理由がやっと今判りました! 写真が凄く綺麗!
これはお知らせしなければ、と思いました。
今後共、綺麗な写真と話題、お願いいたします。
違和感ですか!笑
ありがとうございます。下書きのまま眠っている記事たくさんあるので、少しずつ時間を見つけて投稿していきたいと思います。