こんにちは!前のめり(@maenomelife)です!
今回の取り上げるのは、ライカの中でも、設計者が失敗作とまで言ってしまった不人気レンズ。
Leitz Summar 5cm f2 です。
私のお気に入り。悪評が多いけど知るほどに味が出てくるこのズマールをぜひ知ってください。
ズマールの概要
レンズのスペック
レンズ構成 | 4郡6枚 ガウスタイプ |
画角 | 45度 |
絞り | f2 – f12.5 (六角絞り) |
最短焦点距離 | 1.0m |
重量 | 約180g |
フィルター径 | A36(外形36mmかぶせ) 内径34mm |
発売年 | 1933 |
ズマールはライカが開発した最初のf2.0のハイスピードレンズです。
また、ライカ初のガウスタイプのレンズで、ガウスの原型に非常に忠実に設計されています。
スペックから分かる特徴は絞り羽根です。
最小絞りは12.5までで、もう1段くらい欲しいところです。
というのも、このレンズの絞りはかなり特殊な六角形の絞り羽根となっています。
通常は平面の絞り機構なのですが、このレンズは、絞り込むとドーム状に六角形が現れます。
これも、ボケの光源が六角形になるので、どちらかというと不人気要素のひとつです。
レンズフィルターは、外形36mmのかぶせ式もしくは、内径34mmのねじ込み式が適合します。
純正品は被せフィルターとなっています。
ズマールの歴史
1933年に発売されその生産数は12万本強と、50mmエルマーに次ぐ数となった大ベストセラーレンズです。
しかし、少々設計に難がありました。
このレンズの前玉硝材は、清掃をするだけで擦り傷が付いてしまいほど非常に柔らかいレンズで、設計者も後に失敗だったと認めている程の欠陥を抱えています。
設計者も欠陥を認めており、発売から6年後に後継のズミタールが開発されるもこのズマールが並行して製造され続けたのは、第二次世界大戦が開戦してしまい、制作難易度の高い新レンズよりも、シンプルな構成のこのレンズが長年製造されたというのが実情ではないでしょうか。
その製造年の長さからバリエーションも豊富で、固定鏡胴で絞り羽の枚数が多い通称「ひょっとこズマール」や、先端がブラックペイントの「先黒ズマール」、南国仕様の「トロッペン」その他にも絞り値が異なったり、ニッケルとクロム仕上げがあったりします。
また、価格もライカの標準画角レンズとしてはかなり安く、標準的なタイプでは店頭でも2万円台から購入することができます。
私の所持しているのは1933年製の先黒ズマールで、沈胴鏡胴と相まって非常にトラディショナルな佇まいです。
レンズ構成に触れると、ガウスタイプとはドイツのガウスさんが1800年代初頭に提唱して、その後1800年代末にドイツで実際に開発されはじめたレンズです。
皆さんご存知、カールツァイスのプラナーもガウス型です。
このライカの開発したズマールは改良が重ねられ、現代のズミクロンにも受け継がれています。
ガウスタイプは対照型のレンズ構成により、歪曲や色収差が無いという非常に素晴らしい特徴を持っています。
しかし、その反面ガウスタイプは空気との接触面が多くなってしまいフレアやゴーストに非常に弱いです。
この時代にコーティング技術はまだない(一部、後コーティングされたものもある)ので、ズマールの逆光性能は非常に弱く、本来のガウスタイプの性能が発揮できていませんでした。
また、この戦前の時代にはカールツァイス社のゾナー50mm f2とどちらが優秀かという大論争があったそうです。
しかし、残念ながらこの時代ではゾナーの方が張り合わせが2 面少なく内部反射に有利で、かつ収差除去の技術がガウスタイプよりも優れており、ツァイスに軍配が上がっていたのが事実のようです。
ですので、1930年代当時からこのレンズは開放で使えないボケ玉として悪評がつきまとっていました。
これが戦後の時代になるとコーティング技術の発展から今でも銘玉として名高いズミクロンをはじめとする非常に優れたレンズが生まれ、また日本において一眼レフカメラ開発が進みミラーと干渉するゾナータイプは望遠を除き消えてゆきました。
そして時は流れ21世紀。
レンズの収差も優れたレンズで溢れた今、このレンズの個性が輝きだしているのです。
作例
まずは、絞り値を変化させた時の画質の違いを比較してみます。
レンズ中央部のスポンジの質感と、ピント面と背景の距離を長くして、点光源の動きを注目してみます。
はじめに開放背景の光源に注目すると、
開放では、典型的なグルグルボケ。
目につくことも多いかもしれません。
ただ、無理のないレンズ構成のため、ボケの質は素直です。
そして、このレンズの最大の特徴の六角形のボケ。
まだ、回ってます。
ここまで絞ると、ぐるぐるな非点収差は収まってきます。
大分、ボケの形も歪みがなくなってきています。
そして、レンズ中央部を見てみると、
スポンジの質感は開放付近では、球面収差が大きく柔らかい雰囲気ですが、f4まで絞ると解像してきます。
ここまで絞ると、かなり質感も出てきます。
お次も似たようなシーンで。
かなり柔らかい質感です。
左側の牛の像の表面の質感がかなり伝わってくるようになります。
開放では、特にハイキーがかなり滲んでますね。
2段程度絞れば、大分質感を取り戻せます。
背景のコントラスト差が大きいと、かなり個性が出るレンズです。
場合によっては少し煩くなるかもしれませんが、このような主題のない写真では、より印象的に伝えてくれます。
このボケは非点収差からくるものなので、それを防ぎたい場合には、絞るか、ピント面とボケの距離を短くする必要があります。
クセ強め、性能低い。でも楽しい。
このレンズの最もわかりやすい魅力は価格です。
ライカの特に標準画角のレンズは高価なものですが、このレンズに限っては製造数と前玉の弱さ、収差の大きさという不人気さが相まってかなり安価に入手できます。
しかし、作りの良さや写りの素質はまさにライカのレンズで、前玉の傷によるコントラストの低下や、ノンコーティングによるフレア・ゴーストの発生というデメリットもデジカメ時代の今では、フィルムっぽいような淡い写りも期待できますし、変な映り込みがあれば撮り直しもできます。
こういった特徴はとりあえずライカを試してみたい方や、デジタルでフィルムっぽい写真を撮りたい方に特に合うのではないでしょうか。
このズマールを手にしたら最後、後戻りのできないライカ沼に誘われること間違いありません。
下記の写真もぜひ御覧ください!
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