
こんにちは!前のめり(@maenomelife)です!
今回のレンズはこちら。

Auto Switar(オートスイター)50mm f1.8 AR
スイスのシネレンズメーカーのKern Aarau(ケルン アーラウ)製 ALPA用レンズです。
結構オールドレンズ好きの中では知名度の高いレンズだと思います。
今回は松屋銀座で開催されていた中古カメラ市でお安く購入することができました。
Contents
アルパとケルン社 スイター50mm f1.8について
各社とこのレンズについて、忘れてしまう前に簡単にまとめておきたいと思います。
まずはALPA(アルパ)について。

アルパはウクライナのジャック・ボゴポルスキー(ボルスキー)が設計し、時計産業でも有名なスイスにある時計用部品メーカーのピニオン社が製造していたカメラです。
そのALPAはキワモノの極みのようなカメラで、レフ機にしては類を見ない超ショートフランジバックで、レンジファインダーとウェストレベルファインダーを併せ持つ不思議なカメラです。
次期モデルでは、ファインダーが斜め45度になり、そして最終的にはレンジファインダーも無くなり普通のレフ機になります・・・それでも使いづらいですが。
価格も超高額だったそうで、年間で1000台程度しか生産されないという個人事業かと思うくらい生産数が少ないものでした。(それなのに45年も事業が継続されたそうです)
アルパに供給されるレンズも非常に吟味された個性的なものが多く、サプライヤーはドイツのシュナイダー、フランスのアンジェニュー、オランダのオールドデルフト、そしてこのケルンなどとシネレンズメーカーも多く、他人に売る気がないようにしか見えないカメラです。笑
蛇足ですが、その中身もスイス時計のようにシャッター廻りの歯車が非常に美しく、非常に凝った作りになっています。お世辞抜きに言えば、無駄の多いカメラ。
おかげでオーバーホール費用はライカの倍はかかります。(苦笑
そして次にケルン社についてですが、ケルンはピニオン社と同じスイスにあり、シネレンズを中心に製造している光学メーカーです。

ケルンがスチル用レンズを供給したのは、後にも先にもアルパ用のスイターのみでした。
ボルスキーはボレックスというシネカメラを生み出したことも有名で、その繋がりでもあるのでしょうね。
このSwitarは大まかに4世代に分類され、初代のスイター、そして2代目で絞り込んだときのファインダーの暗さを改善するためにプリセット絞り機能が付いたオートスイター。
3代目からはマクロスイターとして、よりレンズの繰り出し量を増やしたモデルになり最も人気があります。
4代目はレンズ構成が若干変更になり、f1.9と若干スペックが変わった(あまりに高価なためコストダウンの為と言われている)モデルになります。
このレンズは超高価なカメラ本体よりも更に高価なレンズであったそうですが、アルパの標準レンズとしてスイターが6000本強、マクロスイターで15000本強も生産されたレンズです。
アルパのカメラ自体が42000個程度しか生産されなかったと思うと、超ベストセラーですね。
高価な理由は、レンズの価格なんて糸目もつけないシネ業界に準じたアポクロマート仕様のレンズであったからと言われています。
アポクロマート仕様のレンズは通常のレンズに比べてコストが10倍かかるとも言われており、その拡大率が途方もなく大きい映画においては重要だった色収差ですが、スチルカメラ(特にフィルム)でアポクロマート仕様が必要なのかと言われると少し疑問も残ります。笑
標準レンズでマクロとアポクロマート仕様と聞くとALPAのその変態っぷりがよくわかります。
アルパレンズはアダプターで化ける

アルパはボディがなかなか特殊なのですが、レンズはアダプターを用いれば現代では非常に多くのカメラで楽しむことができます。
フランジバックはライカMとニコンなどの一眼レフマウントの中間くらいで、かつレンジファインダー機構を備えていたこともありライカMではなんとアダプターを介せば50mmレンズは距離計まで連動して使用することができます。

内側のシルバーの部分が、レンズと連動して移動量をボディに伝える部分です。
また最短焦点距離が短いので、ミラーレスカメラならばその魅力を余すところなく使うことができます。
私が買ったのは中国製の安いアダプターですが、ちゃんと距離系連動機構がついています。
最初は距離連動がずれていたのですが、よく観察すると調整できる構造となっており無事1m〜無限遠まで連動するようになりました。

レフ機用レンズですが、ショートフランジバックの為アダプターも薄くM型ライカにつけても違和感は全くありません。

とりあえず撮ってみる
以下すべて開放での撮影です。
機材:M10-D + Switar 50mm f1.8

夜は明暗差が大きくなるので、収差が可視化されやすいです。

普通のオールドならもっと暴れるところ、非点やコマはかなり抑えられている印象です。

暗部の表現が良いですね。椅子の質感はすごく良く出ています。

信号は盛大に滲んでいます。球面収差は開放ではそれなりに大きいですね。
滲んでこそ、オールドレンズです。

なぜか木に絡んでいたear pods。白はやはりよく滲みます。

前ボケ、後ボケどちらもすごく美しいです。




これなんかは立体感が最高です。木陰の雰囲気がよく表現されています。

このコントラスト差なんかはグッとくる描写です。ボケもキレイです。

そしてモノクロ





モノクロになると球面収差もまた雰囲気が変わります。
カラーでは滲みは目立ちますが、モノクロではなんだか古く懐かしい感じになるので個人的にはモノクロの描写はみなさん誰しもが美味しいと感じられるのではないでしょうか。
スイターは買い。ライカで使うならばマクロよりむしろオートスイターを選ぶべき。
これは随分上品なレンズだなぁというのが感想です。
ハイライトのにじみ、美しいボケはライカでいえば35mmの球面ズミルックスのようです。
ハイライトのにじみが気になるならば、おそらく僅かに絞れば改善すると思います。
試してませんすみません。
そんなオートスイターが約10万円、マクロスイターで20万円で買えます。
私のようにライカのレンジファインダーで使う場合は、距離系連動はマクロの分はいらないです。
マクロは同じ光学系をただ単に繰り出し長を伸ばしただけのレンズなので、ヘリコイドも大きくなっていて価格も倍であることを考えたら、むしろ普通のスイター(オートスイター)のほうが良いと思います。
アポクロマートなライカ距離系連動のオールドレンズが、たったの10万円ですよ。
私がこの間買ったKinoptikは同じアポクロマート仕様ですが、そちらの価格は5倍以上です。笑
なぜもっと早くこの事実に気づかなかったんだ・・・!
ちなみに初代のスイターがアルパボディのシャッターボタン用のアームが無くて一番コンパクト。
かつ絞り羽根も15枚と、9枚のオートスイターよりも優れています。
ただし製造数が1000本強と、あまり目にする機会がないので、もし見つけたらぜひほしいなと思います。
逆にアルパのレンズの欠点はフィルターとフードが専用品ということ。
そして、ライカとはヘリコイドの向きが逆ということくらいだと思います。
スイターは元々超高額レンズということを踏まえれば、他のオールドレンズに比べると価格上昇はまだあまり起きていないように見えます。
2000年頃のクラカメブームの時よりも安く買えるということは、後に価格が急騰したライカのレンズを思い出せば今が買いということですね^^