前のめりです。
久しぶりに日記のような更新。そしていつものように誰にも刺さらない話ですがよろしくおねがいします。
世間はM11で盛り上がる中買ってしまったライカのボス。ライカS(Typ007)。
2年くらい前から細々と欲しいと言い続けていましたが、オールドレンズばかりで現行のレンズすらまともに使いこなせない奴が本当にこんな立派なカメラを扱えるのでしょうか?
LEICA Sについて
ライカといえば私も愛用しているM型をはじめ、最近人気のミラーレスSLシリーズ、コンパクト系のQやCL,D-LUX等がありますがこのライカSが話題に上がることは全くと言っていいほどありません。
このライカSはライカの中で現行唯一の一眼レフにして、最近新製品も増えて市場が活発になりつつあるデジタル中判カメラです。
SシリーズはCCDセンサーを搭載した初代のS2,S2-Pと2代目のS,S-E(Typ006)があり、そしてこのCMOSセンサーに変わったS(Typ007)、現行のS3があります。
(スペックは割愛します)
まずひと目見て思うのは、このデザイン。
格好いいというよりはとにかくイカツイ。
重量は1.2kgあり、一昔前のフルサイズハイエンド並といえばコンパクトに聞こえる気もするけれど、今主流のミラーレス中判と比べるとやはり重たいなという印象。
センサーサイズは45*30mmのライカプロフォーマット。フルサイズの約1.7倍です。
他社のデジタル中判は例外なく645をルーツとした44*33mmという4:3のフォーマットを採用していますが、このライカSシステムだけは、3;2というライカが生み出して今ほぼすべてのカメラに採用されている比率になっています。
ライカのシンプリシティは健在で、ボタンやダイヤル類には表記すら殆どありません。
そして左肩にはGPSモジュールがあります。最初は何か表示されるのかと思ってました。
GPSはTyp006から搭載されましたが、006ではLEICA SLと同様に左肩が出っ張っています。あのデザインを褒めている人を見たことがありません。
とはいえ、デザインを富士フイルムのGFXと比べれば、こちらのほうがスッキリしていて私は好きかもしれません。HasselbladのX1Dの方が格好いいけども。
勿論、素晴らしい所もあります。
私がなぜハッセルや富士ではなくわざわざライカを選ぶかといえば、光学ファインダーを搭載しているという点に尽きます。
まず、このファインダーが非常に素晴らしいです。
ファインダー倍率87%、視野率98%という超大型かつ見え方も美しいです。これは他のメーカーとは一線を画す素晴らしさだと思います。
覗かないと分からない良さですが、この超高性能なファインダーをコンパクトなボディによく収めたものだと称賛せずにはいられないレベルです。
勿論一眼レフも、我々が使うレベルのものではペンタックスやハッセルのデジタルバックもありますが、ライカの良いところはこれらよりも新しいシステムだということです。
他のマウントではフィルムのサイズ、マテリアルに最適化されていますが、Sシステムは2010年という非常に新しいシステムなので、あらゆる仕様がデジタルミドルフォーマットに最適化されています。
例えば、APO MACRO SUMMARIT-S 120mm は、APO SUMMICRON-M 50mmと同じ発売年です。
Mのレンズでは古いマウントやレンジファインダーの特性に縛られた中で最高のレンズを生み出す必要があり、その分成約も価格も厳しいものがありますが、このSシステムではミドルフォーマットというセンサーサイズを最大限生かし、一切の補正を必要としない光学的に素晴らしいレンズ設計になっています。
なぜLEICA S (Typ007)か
ブログ風に書くと、3つの理由があります。
①意外と安い
とにかくライカSシリーズは中古が安いです。定価250万円のカメラがたったの5年、10年落ちで3-70万円位。
下手したら最近高騰しているM9なんかより安くなってしまっています。
それでいてこのS(Typ007)はLEICA SLやLEICA Qの初代と同年に発売されたモデルと言えばその性能感が伝わるでしょうか。
CMOSによる高感度耐性、LEICA PHOTOSアプリとの連携、ライブビュー撮影、4K動画撮影。
しかし、Sの中古はなぜここまで安いのでしょうか。
明確な理由はわかりませんけれど古いものは殆ど故障(センサー剥離)しているのと、プロ向けでアマチュアが新品で購入できる価格帯でもないので酷使された個体が多いこと、そしてそもそも人気が無いからでしょう。
また、S007についてもCCDからの乗り換えを前提に大安売りをしていたので、安価に出回っています。
ただし、安いのでリセールは当然期待できません。
新品はこれで・・
250万円が28万円で60万円のレンズは一桁。ほとんど値崩れしないライカとは思えない買取価格。
②CCDの悪夢を見る必要が無い
私はこれまでM-EとM9-Pで短期間に二度センサー腐食したカメラを経験してきました。
S2やS006は同様のCCDセンサーを搭載していて、今もファンが多いCCD画質を中判で楽しめるものです。
そしてなぜかライカのコダックCCDにのみ発生するセンサー腐食。
本来はコーティング層がガラスへの侵食を防止してくれるのですが、それが上手くないのか製造プロセス上有害物質を除去しきれないのかわかりませんが、対策品すら無く市場に存在するCCD型ライカSはほぼすべてにその問題が発生しています。
相当ライカの要求するカバーガラスの性能を満たすことは困難だったのでしょう。
販売から10年程度でこのような状況ですから、製品寿命で見れば致命的だと思います。中古を購入してもほぼ確実にCCDがダメになり、交換費用は100万円弱。
本当はCCDが良かったのですが、S2やS006を選択するのは勝つ可能性が非常に低い博打でしょう。
M9と違いレンズの開放値も小さいので映り込む可能性が高いです。
また、レンズが故障しやすいことで有名です。
これはレンズAFモーター周りの設計不良で、S2で使用していて問題なくともS007以降で使用すると確実に壊れるというものです。修理は対策品への交換ですがこれも5万円程かかります。古いボディとセットになっているレンズは十中八九未対策品です。
もしLEICA Sを購入する場合は、保証付きがベターです。私もボディレンズ共にライカ正規保証が受けられるものを購入しました。国内代理店で新品購入すれば、オプションのサポートを有償で追加することもできます。
③機が熟したから
頭にも書いたように2年ほど前から欲しい欲しいと言ってきたものの、大伸ばしプリントをするわけでもなくスタジオ撮影や作品撮りをするわけでもないのでなかなか踏ん切りがつかずにいました。
いいぞ!(考えるな。買え。感じろ。)
そんな中で、最近周りに中判デジタルに手を出す方が増えてきたのと、このツイートを頂いたのが決心するきっかけだったのかもしれません。笑
勿論欲しかったのはS3ですけどね、アマチュアがカメラに250万円も出すなんて阿呆以外の何者でもないでしょう。買えるわけがありません。
と言うのは冗談で実際の所は娘が七五三を迎えるらしく、いつまでもぼやぼやの写真ばかり撮っていては将来怒られてしまいそうなので、気合を入れるために購入したというわけです。
買ってからわかったのは、七五三は今年ではなく来年だったということ。練習期間が伸びたので良しとしましょう。
LEICA Sのレンズ
標準レンズのSUMMARIT-S 70mm f2.5と、ブツ撮り用にAPO MACRO SUMMARIT-S 120mm f2.5を選びました。
これは必要な人からすれば必須機能とも言えますがストロボ全速同調のレンズシャッター(CS)搭載モデルもラインナップされています。
通常、ミドルフォーマットはフォーカルプレンシャッターも大型化するので、ライカSでは1/125の同調速度になりますが、レンズを変更するだけでストロボにも無制限に同調することができます。
最もシェアの大きなGFXシリーズではこの機能はありませんから、このアドバンテージは特筆すべきものですね。
(最近のストロボは優秀でHSSも安定しているのでメリットは薄くなりつつあるかもしれませんが)
Sシステムレンズは2022年現在下記となっています。
プライム | 24/3.5, 30/2.8, 35/2.5, 45/2.8, 70/2.5, 100/2, 120/2.5(macro), 180/3.5 |
ズーム | 30-90/3.5-5.6 |
特殊 | 120/5.6(チルトシフト) |
一通り揃っていますが、あまり数も多くないので沼に沈む必要もありません。
あと気になるものといえば唯一の明るさf2であるSUMMICRON 100mm、そして超広角にして超画質のSUPER ELMAR 24mm、それとズーム位でしょうか。全部揃えたら300万円くらい? 180mmも欲しい。
ラインナップを見るに軒並み明るさは2.5から2.8程度ですが、開放f2.5という明るさは35mm判のようにどのような環境にも対応できる明るさを求めずに、暗いならばしっかり環境を整えた上で人を撮影するのに開放で性能が発揮できるよう作られたレンズなのでしょう。知らんけど。
さてこのように純正レンズは10本足らずのラインナップでかつ高価ですべてを揃えるなんて夢のまた夢ですが、素晴らしいことにライカ純正で他社マウントアダプターが出ています。
しかもその種類はハッセルVとH、CONTAX645、Mamiya645、PENTAX67とかなりの充実度です。ライカがボディと一緒に開発していますから、HとC645ではAFまで使えてしまいます。中判スタジオカメラマンからの受け入れに力を入れているのでしょう。
しかしその賜物で、あのマミヤセコール80mmf1.9だって、京セラアポマクロプラナー120mmもハッセルの80mmや100mmf2も全部使えてしまいます。なんて素晴らしい。(GFXだって使えますけどね)
このDistagon 35mmも20年ほど前の設計なので、解像度、逆光性能等不満なく使用することができています。
ライカがオフィシャルにツァイスのレンズをサポートしているのは非常に珍しいことですね。
・・・このマウントアダプターで富士のラージフォーマットカメラ買えちゃうんですけどね。
ライカの中判の存在意義を確かめていきたい
中判の存在意義は何かと言われると、正直わかりません。
じゃぁなんで買ったんだと言われてもスミマセンとしか言えませんし、宝の持ち腐れだと言われても認めるしかありません。
町中でこのカメラを使うことは、一般道をスーパーカーやカイエンのようなデカくて燃費の悪い車を走らせるようなものでしょう。
中判は昨年やっとフィルムに手を出した程度で、まだまだ馴染みのない世界。
でもこのデジタルで言えば、中判のほうがボケるというのは誤りで実際は35mm判の方がNoctilux等レンズが充実しているので、ボケますよね。3D感も出ます。
センサーもM11ではライカSを上回る6000万画素になり、同じ15EVのダイナミックレンジを持ち、色再現度も向上しました。
センサーだけでみれば、ライカSの優位性は脅かされていると言っても過言ではありません。
結局の所使ってみないとわかりませんが、中判のメリットといえば、ミドルフォーマットに最適化されたレンズを使えるということなのではないかと感じています。
当初は良さはRawにハイライトとシャドーが残ることなのかなと思っていました。
しかし、ダイナミックレンジはフルサイズでも変わりない性能だと言われます。
階調性が優れているかといえば、色深度でいえば通常のカメラが12bitであるのに対し、富士のラージやM型では14bit、ミドルのライカとハッセルブラッドだけが16bitです。
しかし、実際の階調性はいくら分解能が高くとも、それをきめ細やかに捉えることのできるレンズとセンサーが組み合わさり始めて実現するものなので一概に16bitだからと言って手放して喜ぶことは出来ないはずです。
強いて言えば、私のiMacの色深度は10bit、辛うじてプリンターは16bitに対応していますが、アナログのフィルムカメラは快調は無限です。実際には粒子の大きさの影響を受けますが。なので、 16bitなんて威張れるものではないでしょう。
上にも書きましたが、Sシステムのレンズはこのセンサーに最適化されています。
同じ画角でも、より大きな面積を使って描写することができます。
以前どこかの記事に書きましたが、解像度と階調はトレードオフの関係にあります。
ミドルフォーマットでは、緻密さを面積と画素数でカバーし、より階調性の豊かなレンズ設計を行うことができるのだと思います。
焦点距離が伸びることで、画面の歪みも無理なく設計できたりと、様々な光学上のメリットがあることは容易に想像がつきます。
ライカSシリーズレンズを使ってみたかったのも選んだ理由のひとつですが、最近はコシナのアポランターやライカもアポズミクロンのように再現性の優れたレンズラインナップも充実してきておりM11との組み合わせや、SL2、Sシステムではどれが一番優れているのか、正直わかりません。
でも、写真を拝見しているとライカSで撮影された写真は言葉にはし難い凄みを感じることがあります。
いつかライカSで撮影されたという息を呑むような写真をに引き込まれたときから、私はSを使いたくて堪りませんでした。
同じ値段を出せば、SL2にアポズミクロン2本くらいは買えていたかもしれません。でも、SLを買うならSを使うと決めていたのもありました。
あれこれ想像上で捏ね繰り回しても、実際に使って感じた経験に勝るものはありませんから、まずはSをじっくり使っていきたいと思います。
こうしながらSのボディを眺めていると、なんだか少し格好良く見えてきました。
M11+APO SUMMICRONも非常にコンパクトなシステムで魅力的ですが、Mは機動性とオールドレンズとの組み合わせが好きなので、Sと上手く棲み分けていければ良いなと思います。
Sが気になる方は、是非下記からアプリをダウンロードしてみてください。
少しアプリが古いものなので画質はイマイチですが、LFIというライカの発行する写真紙の中でのSマガジンというシリーズや、Sにまつわるデジタルコンテンツがすべて無料で閲覧することが出きます。
ペーパーバックの迫力をスマホの画面ですべて体験することはできませんが、Sの世界を垣間見ることのできる、インターネット上で最も最適なコンテンツだと思います。
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