新・旧エルマーとバルナックライカ

今まで縁のなかったエルマーの5cmですが、そろそろ買ってみてもいいかなと思い始められるようになり気づけば2本やってきました。

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新エルマーと旧エルマー

大口径レンズが大好きな私ですが、エルマーの3.5cmだけは年一のイベントに参加する為になんとか使い続けること2年強。思ったより短い付き合いでしたが、いつも持ち出しているので不思議と手になじんでいます。

しかしながら5cmに関してはその他魅力的なレンズを考えると、なかなか購入意欲が湧かず。

 

そんな私も一通り気になるレンズに手を出して、今はゆっくりエルマーで撮っていってもいいかなという気分になり手にしたのがこの全回転のニッケルエルマー。

 

このエルマーはシリアルナンバーはありませんが、恐らく1932年頃に作られたもので鏡胴ナンバーは4。

無限遠ロック無の全回転、ヘリコイドにはトルク調整の為の板バネが入っており、とても操作感の良いレンズ。

 

エルマーの初代5cmのタイプだけで10万本以上作られたと言われており、このような様々な特徴を有した個体があるのも楽しみのひとつかもしれません。

 

しかし、本当に欲しかったのは旧エルマーと呼ばれる特別なエルマー。

 

他の方の記載を参考にすると、ライツは当初ゲルツよりガラスの供給を受けていたものの、1925年よりその供給がされなくなり、以降ショットのガラスが使われるように。

このゲルツガラスのものを旧エルマーと呼び、1928年のロットであるシリアルナンバー13100までの個体にこの旧エルマーがくっついているとか言われています。

 

しかし、旧エルマーなんて滅多に出会えるものでもなく、価格も旧エルマーとして売り出されると10万超えで昔は20万円くらいしたとか。

 

さらに言えば、クロームメッキタイプの物が欲しいけれど数が少ないのでいつか見つかればいいなという程度に考えていました。

 

巷ではニッケルのほうが人気がありますが、デジタルで使っているブラッククロームのボディにニッケルはイマイチだったので、個人的にはデジタル(ブラッククローム)にはクロームが好きです。

  

なんて考えること1日弱、こういう時に出物があるものでクロームのコンバージョンエルマー付きのDIIIが見つかったのでした。

 

本体の番号は13100超ギリギリの13080番代。本体とレンズがセットで残っています。

見る限りは旧エルマーっぽいし、実物もエルマーに詳しい人に何人かに見てもらったので間違いなさそう。

旧エルマーは13100までは可能性あります!

 

思いがけず2本になってしまったエルマーですが、当初のこだわりの全回転はDIIIではスローシャッターダイヤルにかぶり非常に使いづらく早々にお蔵入り。

しかも、装着するとニッケルとクロームも合わないし、マウントの大きさもちょっと違います。DII時代とそれ以降ではマウント外形が変わったのでしょうか。

 

でもいいレンズですね。

ライツによって改造されたライカ

そんな経緯で入手したDIIIと旧エルマーですが、この個体は珍しくボディレンズ共にニッケルではなくクロームメッキの仕上げになっています。俗に言うセミクローム。

 

ライツは後年、A型だけでなく様々なバルナックライカを新しいモデルに改造するというマメな仕事をしていました。多くの部品は最新のものに入れ替わりますが一部の部品についてはオリジナルのまま組み込まれるので、バルナックは多種多様な状態のものがあり面白いのです。

 

この個体はトップカバーはピカピカのまま残っている一方、ボトムカバーは当時のままでしょうか、そんなギャップもまた面白い個体です。

 

ボディやレンズの特徴から、この個体は1947~1950年前半頃に改造されたものではないか考えます。

この時代はペイントのボディやレンズは製造されていないはずですので、過去に塗装された状態でスペアパーツを残してあったものなのか、当時わざわざ塗装していたのかはとても興味深いですよね。

旧エルマーの見分け方

私自身エルマーは今まで興味のない部類のレンズだったのもありあまり詳しくはありませんでしたが、今回みなさんに色々と教えていただいたのでまとめておきます。

以下の条件が当てはまっていても、あとからガラスが交換されたり、仕様切り替わりの時期で同じ特徴を有している、外装が破損しレンズブロックだけ改造で良品に入れ替わっているなどいろいろな状況が考えられ確実な見分け方というものはありませんので、おそらくというレベルで見てみるのが良いでしょう。

 

旧エルマーの条件
  • シリアルナンバーの記載が無い
  • 無限遠ロック裏側の数字(鏡胴ナンバー)が0,1,3のいずれか
  • レンズ前面の押さえパーツの内側にねじがきられていない

 

解説

1.シリアルナンバーの記載が無い

シリアルナンバーの記載が無いのは必須条件です。

旧エルマーは全てA型ライカから取り出されライツが後改造でエルマーの改造用鏡胴に収めたものだからです。

 

しかしシリアルナンバーの無いレンズはいくらでもあります。

上記記載のとおり、旧エルマーの付いたA型ライカのシリアルナンバーは13100以前のものといわれておりますが、それ以降に製造されたA型ライカのほうが圧倒的に数は多く、それらのカメラも同じようにコンバージョンされています。

 

また、推測ですが最初に紹介した全回転の4番のエルマーのように、エルマー3.5cmやヘクトール5cmには後改造でも無いにも関わらずシリアルナンバーの記載の無いレンズがたくさんあります。

これらレンズの共通点は全て本体にセットで購入できるレンズであることから、CやDII,スタンダードの時代に製造されたこれらのレンズにはシリアルナンバーを記載していなかったのかもしれません。

 

2.無限遠ロック裏側の数字(鏡胴ナンバー)が0,1,3のいずれか

これはライツが後方互換のために後改造する際に、3パターンの鏡胴を割り当てていた事が分かっているためです。

無限ロックのないタイプの旧エルマーと呼ばれるものは調べてみましたが1本のみ見つかりましたが、恐らく後から4番鏡胴に載せ替えたものだと思われるものでした。

全回転のロック付きの頃から存在し、最終的には赤エルマーの鏡胴まで様々な姿の旧エルマーがありますが、鏡胴ナンバーは0,1,3です。

ちなみに、旧フォントと呼ばれるものもありますが、新エルマーの乗ったものもあるので旧エルマーの証拠にはなり得ないようです。

 

逆に私の個体のように、メッキと絞り値まで変わっているものについては、確実に後年に鏡胴を載せ替えているので、仮にオリジナルが旧フォントだったとしても消滅しているでしょう。

 

3.レンズ前面の押さえパーツの内側にねじがきられていない

手元にある私のも2つの個体を比べると前玉の部品が異なっていることがわかります。

 

旧エルマーは1.3万番、新エルマーは恐らく10万番頃のレンズですが、旧エルマーには内側にねじが切られていません。

これが、1.4万番代のA型エルマーを比較してみるとねじみぞが切られていたので、この特徴を有しているのは1.3万番代以下のものなのであろうと考えられます。

逆に4桁初期や3桁頃のエルマーは前玉にカニ目のみぞがあったりしてまた雰囲気が異なっています。

(ロシアレンズコピーも同様の特徴がありますが。)

 

このようにエルマーに限らず、多くのレンズでは何度も部品の形状は変わるので、あくまで参考というレベルにとどめるようお願いします。

 

バルナックライカはいいぞ

普段はM型ばかりな私でしたが、この軽さと小ささは久々に使うと大変素晴らしいものです。

見ての通り、エルマーが似合うのはやっぱりバルナックですよね。

 

M型ライカは高級品ですが、バルナックライカは安いです。

整備済みでも、4-7万円くらい。M型なんて今や軒並み2-30万円ですからね。

 

そしてバルナックには多種多様な改造遍歴を想像したり古きを愛でる面白さがあります。レンズ自体も戦後特許流出によって事実上ユニバーサルマウントですから、エルマー以外に無数にあります。

 

唯一気になるのは距離計ズレです。以前にガンガンぶつけながら使っていた時期があり、すぐに距離計がズレて結構面倒くさかったので、大事に使ったほうが良いカメラではあります。

 

最近一通りカメラレンズを使って好奇心が沸かずにいましたが、思わぬ方向で面白さを見つけることができた気がします。

去年買ったValoyとの相性も素晴らしいことでしょう。

久しぶりにフィルムカメラメインで楽しもうと思います。

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